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2012〜2013(1年目)
2020年4月発売の生酒
概要
2008年4月、青森県十和田市にて常設作品を設置した十和田市現代美術館が開館した。
2011年夏、青森県に滞在して自然を観に行くことにする。ちょうど行ったときの十和田市は秋祭りを控えており、街の人々は準備に追われている様子であった。美術館のイベントで出会った地元の人に連れられて、秋祭りの主役である山車を作っている現場へと行く。山車を作る小屋ではたくさんの人たちが作業をしており、その中に鳩正宗酒造の杜氏の佐藤企氏がいた。実家が米農家の佐藤企氏は自家栽培米を使って美味しいお酒を作っていた。地元の人たちとお酒を酌み交わし仲良くなり、より気持ちよく美味しいお酒で酔っ払おうと、出会ったみんなと共に協働で米作りから酒造りまでやろうということになった。
米作りにも酒造りにも必要不可欠な水に焦点をあて、山、湖、川、その周りに生育する動植物たち、それらがどのような環境でどのような関係性にあるのか、そこに根付く人々の営みも含めて自然と人の関係を探って行くことにした。
2012年5月、初めての田植えが行われて以来毎年、田植え、稲刈り、酒の仕込み、宴会を行なっている。
水について
森林に降り注いだ雨の一部は樹木に当たり、蒸発するもの、水滴になって落下するもの、幹を伝って林床に達するものと、直接林床に達する水などがある。地面に達した水も一部蒸発していくが、林床に達した水のほとんどは土壌に浸透していく。
十和田湖・奥入瀬川のまわりの森は落葉樹が多く、林床は落葉で覆われている。落葉は森林に降った雨水が地表を伝って流れてしまうのを防ぐ。さらに、実生などの小さい植物は、風や水によって落葉が地表を流れてしまわないようにする働きをしている。土壌に浸透した水は保水され根によって吸収されるものと、土壌中を移動し河川に流れ込む水、地下水帯まで到達して地下水流になる水とある。
根から吸収された水は、生命の根源である光合成の原料として二酸化炭素と共に使われつつ、樹木自体の様々な生理機能にも役割を果たす。
葉から蒸散される水蒸気は葉の気温上昇を抑え、そこの気象環境に影響をもたらす。
そして、蒸散作用によって大気に移動した水蒸気が上昇と共に雲を形成し雨を降らす。
春になり、八甲田山に降り積もった雪は雪解け水として流れ出す。
田んぼには水が張られ田植えが行われる。
十和田市の川について
十和田湖から唯一流れ出た奥入瀬川は支流と合流しながら十和田市街地の南側を東へ流れる。上流で分岐した江戸時代の後期に造られた人工河川の稲生川がある。この稲生川によって台地であった十和田の土地に用水路が張り巡らされ稲作が始まる。
お米について
作るお米は飯米の「まっしぐら」。
東北の気候や土壌に合うように配合され、平成18年から作られるようになったお米。
天祈りについて
“てのり”と読む。十和田や上北郡の方言。
農作業の合間に行われる神への感謝の行事。
昔は農家の人たちがお酒や料理を持ち寄って氏神様の元へ集まり、天候の恵みや収穫への感謝を祈ることであった。
箱とラベルの絵について
十和田市から米を作るために必要な水とお酒を造るのに必要な水がどこから来ているのか辿って行くと八甲田山である。
八甲田山の頂上付近まで行くとアオモリトドマツが群生している。
八甲田山頂の非常に厳しい環境(冬期には水滴や水蒸気が葉や枝に付着し氷結してできる樹氷となる)に適応できるのがアオモリトドマツだけなので、他の樹木の侵入はほとんど見られない。
そのような環境下に自生しているため、環境の違うアオモリトドマツとは趣が全然違う。
このような樹の生える八甲田山から流れてきた水で作る米、八甲田山に染み込んでできた地下水で仕込んだ酒、山の頂上から田んぼや酒蔵までの自然環境や風景を思いながら呑んだら更にお酒を美味しく感じられるのではないかということで、アオモリトドマツをメインのモチーフにしているのである。
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